医療機器メーカーのWebサイトリニューアルで問い合わせ120%増を実現したプロセスと学び
はじめに:なぜリニューアルが必要だったのか
プロジェクトの発端は、営業部門からの「Webサイトからの問い合わせが少ない」という声でした。
製品情報は充実しているのに、ユーザーがどこから問い合わせればよいのか分かりづらい。
また、会社としてのブランドイメージも古く、採用や営業の現場でも「会社サイトが伝わりづらい」と感じる社員が増えていました。
「このサイトを、ちゃんと“伝わる”場所に変えたい」
そう決意し、私は事業会社のディレクターとして、Webサイトリニューアルプロジェクトを立ち上げました。
フェーズ1:目的の明確化と稟議申請
Webサイトリニューアルは3桁を超える予算規模になるため、まずは社長への稟議申請が必要でした。
単に「デザインを新しくしたい」ではなく、「問い合わせ導線の改善によるリード獲得強化」を目的として設定。
「営業活動を効率化し、企業価値を正しく伝える」という明確なビジョンを提示することで、承認を得ることができました。
フェーズ2:外部ベンダー選定と体制構築
次に取り組んだのが、制作ベンダーの選定です。
既存サイトの保守を担当していたA社はコーディングを継続、デザインおよび構成提案は3社に相見積もりを実施しました。
レスポンスの早さと提案内容の具体性が決め手となり、B社をデザインパートナーとして選定。
最終的に下記のような体制を構築しました。
| 項目 | 担当 |
|---|---|
| コーディング | A社 |
| デザイン / ディレクション | B社 |
| 社内調整・予算管理・精算 | 私(ディレクター) |
複数社を束ねるディレクション業務は簡単ではありませんでしたが、目的を常に共有し「問い合わせ導線の改善」というゴールに向けて全員の意識を統一しました。
フェーズ3:キックオフとスケジュール設計
リニューアル目的の一つが「早期公開による問い合わせ増加」であったため、
サイト全体を一度に刷新するのではなく、3フェーズに分けた段階的リリースを採用しました。
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フェーズ1:トップページ+主要10ページのリニューアル
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フェーズ2:再利用可能な下層ページ約80ページの更新
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フェーズ3:公開後の最終調整・改善対応
これにより、限られた工数の中でも確実に成果を出しながら前進できる体制を整えました。
フェーズ4:レビューと社内調整
医療機器メーカーにおけるWebサイト制作で最も大きな壁は「薬事・医療法の表現調整」です。
「掲載してよい情報」と「NGな表現」の線引きが難しく、製品担当・薬事部門とのすり合わせに多くの時間を要しました。
しかし、ただ待つのではなく、こちらから「Webでどう伝えたいのか」を具体的に示し、
「この情報はこういう意図で掲載したい」と伝えることで、互いに歩み寄りながら進行できました。
この“先手を打つコミュニケーション”が、最終的に大きな信頼とスピードを生みました。
フェーズ5:公開準備とリリース
完成したページから順次コーディングを進め、フェーズごとにテスト公開を実施。
社内告知は2週間前に行い、関係部門が事前確認できるよう余裕を確保しました。
リリース後は、社内テストを経てバグ・リンク切れ等を最終確認。
結果、特段の不具合もなく、予定通りスムーズに公開できました。
成果:問い合わせ120%、そして“見える誇り”
リニューアル後、問い合わせ導線が明確になり、有効問い合わせ件数は**前年比120%**に増加。
特に、医療機関からの資料請求・導入相談が増加し、営業部門からも高評価を得ました。
また、定性的な成果として印象的だったのは、社員からの声でした。
「会社のWebサイトが素敵になって、親にしっかり伝えられるようになった。ありがとう。」
数字以上に、この言葉がプロジェクトの成功を象徴していました。
振り返り:プロジェクトを成功に導いた3つの要因
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目的を“問い合わせ改善”に絞り込んだこと
見た目の刷新ではなく、成果につながる設計を明確にした。 -
段階的リリースによるリスク分散
一気に作らず、フェーズごとに検証しながら前進。 -
先手を打つ社内コミュニケーション
薬事・製品部門との対話を「調整」ではなく「共創」に変えた。
おわりに
Webサイトのリニューアルは「デザイン」ではなく「意思決定の連続」です。
どんなに優れたUI/UXも、関係者の合意形成なしには前に進めません。
今回の経験を通じて、私は「デザイン=社内外の橋渡し」であると強く実感しました。
今後も、“伝わる仕組み”をつくるプロジェクトに挑み続けていきます。

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