共感力を鍛えるには?第2外国語の学習が「脳」と「心」を変える理由
「人の気持ちをもっと理解したい」「多様な人と対話できるようになりたい」――そんな願いを持つ人が増えています。
では、どうすれば“本当の意味で”共感力を鍛えることができるのでしょうか?
心理学のトレーニングやコーチングも効果的ですが、実はもっとシンプルで、かつ科学的に裏付けられた方法があります。
それが、第2外国語の学習です。
参考動画:Why Everyone Should Learn a Second Language | J Lou | TEDxHKU
上の動画は、香港出身のクリエイター J Lou さんによるTEDxHKUでのスピーチです。
彼女は「サードカルチャーキッド(Third Culture Kid)」として異文化の間で育ち、アイデンティティの葛藤を経験してきました。
その中で気づいたのが、「多言語を話すことが、人間の理解を深め、共感力を育てる」という事実です。
言語を学ぶと、脳が変わる
第二言語を学ぶとき、脳は「言葉を覚える」だけでなく、新しい神経回路を作り出します。
脳科学の研究によると、バイリンガルの人は単一言語話者に比べて「灰白質(グレーマター)」が多く、集中力・記憶力・創造性が高い傾向にあるといいます。
エディンバラ大学のThomas Bak博士は、1947年に11歳だった853人を対象に追跡調査を行いました。
63年後、70代になった彼らを再テストした結果――
第二言語を学んだ人のほうが、注意力・記憶力・読解力・知能指数が高かったのです。
つまり、言語を学ぶことは“脳の筋トレ”。
しかも、始めるのに「遅すぎる」はありません。
共感力は「言語の切り替え」から生まれる
バイリンガルの脳は、常にどの言語を使うかを選び、もう一方の言語を抑制しています。
この切り替え作業によって、「注意」「判断」「他者理解」を担う前頭前皮質が発達します。
たとえば、英語と日本語を話す人は、会話の中で“相手がどちらを理解しやすいか”を瞬時に判断しています。
その積み重ねが、「相手の立場で考える」練習になっているのです。
言語を学ぶとは、他人になる練習。
つまり「共感力のトレーニング」そのもの。
文化が増えると、世界の見え方が増える
言語は単なる「翻訳ツール」ではなく、文化や思考様式を形づくる“世界の見え方”そのものです。
日本語の「お疲れ様です」は英語に完全に訳せませんし、
英語の “I’m proud of you.” にも、日本語にはない温度感があります。
第二言語を学ぶと、こうした文化的ニュアンスに敏感になり、
価値観の違いを尊重できるようになります。
つまり、言語学習=人間理解の多層化なのです。
大人になってからでも効果はある
「もう大人だから遅い」と思う人も多いですが、研究はそれを否定しています。
大人になってからでも第二言語を学んだ人は、脳の認知機能が若返ることが分かっています。
また、言語学習はストレス耐性を高め、孤独感を和らげるという心理的効果もあります。
共感力を鍛えたい人へ ― まず「言葉の扉」を開こう
共感力は、知識ではなく体験から育ちます。
そして最も身近な“異文化体験”は、第2外国語を学ぶことです。
- 英語で映画を観て、登場人物の感情を別の言語で感じてみる
- 韓国語で友人と話して、文化の違いを笑い合う
- フランス語で日記を書くことで、自分の感情を言葉で整理する
こうした小さな積み重ねが、あなたの中に“新しい視点”と“優しさ”を育てていきます。
「もし世界中の人がバイリンガルだったら、もっと優しい世界になるかもしれない」
― J Lou(TEDxHKU)
まとめ:言語は、心と脳をつなぐ架け橋
- 第2言語を学ぶことで、脳の神経結合が増え、集中力・創造性が高まる
- 異なる文化を理解する中で、共感力・寛容さが育まれる
- 年齢に関係なく、学び始めれば「思考と感情の柔軟性」が高まる
共感力を鍛えたいなら、英語でも韓国語でも構いません。
新しい言葉を学ぶことで、あなたの“見えている世界”そのものが広がります。
今日からできる最初の一歩――
それは、ただ「Hello」と言ってみることかもしれません。
🎥 参考:Why Everyone Should Learn a Second Language | J Lou | TEDxHKU(YouTube)

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